2018年4月から宅建業法が一部改正されて売買契約取引時において、インスペクションの義務化が完全施行されることになりました。
こういった宅建業法が改正された時に不動産会社に任せるだけではなく売主としても改正内容を把握しておく必要があります。
知らなかったでは済まない失敗をしないように、しっかりインスペクション義務化について売主として気をつけるべきことを把握しておきましょう!
記事の目次
インスペクション説明義務化とは
インスペクションとは、建物状況調査や住宅診断などと呼ばれる「住宅の検査」のことです。中古住宅の取引において、検査をした上で取引を行うことの意味で使われます。
つまりインスペクションの説明義務化とは、中古住宅の取引において住宅の検査(インスペクション)を行ったいるかどうか説明をするということです。
インスペクション説明義務化がなされた背景
インスペクションの説明が義務化された背景は、日本の住宅市場を把握しておく必要があります。日本の中古住宅市場は、欧米に比べて低くなっております。
日本の中古住宅シェアが14.7%に対して、欧米では83.1%となっております。
引用元国土交通省「宅地建物取引業方の一部を改正する法律案より
日本がなぜ中古住宅流入市場が低いかといえば、そもそも中古住宅に対する「質」に対する信頼性や建物劣化などに対する不安があるのではないかと思います。
依然として新築住宅市場のシェアは高く、不動産のスクラップアンドビルドが多いように、中古取引のシェアはまだまだ少ないと言えます。
インスペクションは行わなくていい?
今回の宅建業法改正に伴って注意することは、インスペクションの説明を義務付けられているだけだって、インスペクションをすることは義務付けられていないということです。
つまりインスペクションをしなくても説明を果たせば極論良いということになります。
売却活動において、インスペクションすることはメリットデメリットがあります。どういうったメリット・デメリットがあるのかしっかり把握しておきましょう。
インスペクションの段階
インスペクションには段階的に深さがあります。一次、二次と深くなればなるほど住宅の診断も細部に渡ります。今の大まかな中古住宅のインスペクションは3段階に分かれます。
一次的インスペクション
まず一次的なインスペクションは、目視による調査で構造安全性や日常生活に支障を来す劣化の有無を把握をすることになります。
二次的インスペクション
二次的インスペクションは、破壊調査も含め、劣化箇所の範囲や原因を特定しておくことになります。具体的には、今までの修繕(リフォーム)履歴なども含めて説明・調査を行っていくことになります。
大きい違いは目視でできる一次インスペクション項目に対して、二次インスペクションは、多少なりとも家の構造を見るために壁を割って(破壊)構造内を調査することが二次インスペクションに該当します。
性能向上インスペクション
性能向上に向けたリフォーム前後の住宅性能を把握していくことです。ただし、リフォーム前後という言葉にある通り、リフォームがなされている前提を元に性能向上を説明していくことが性能向上インスペクションにあたります。
具体的には、省エネ・バリアリフォーム、設備リフォームといったことの有無や説明を果たすことが該当します。
今回(2018年)の国土交通省インスペクションガイドライン検査項目
今回2018年から新たに施行される国土交通省のガイドラインは、一次インスペクションの範囲が該当します。具体的なガイドラインで検査項目として挙げられるのは下記です。
- 構造耐力上の安全性に問題のある可能性が高い劣化事象等
- 雨漏り・水漏れが発生している、又は発生する可能性が高い劣化事象等
- 設備配管に日常生活上支障のある劣化等が生じている劣化事象等
今回施行のインスペクション説明義務化
今回2018年施行の義務化について最も大事に把握しておくことは、今回の義務化は「説明が義務化なされている」だけで、インスペクションの実施をしなければならないという訳ではないということです。
インスペクションの売主メリット
インスペクションの説明義務化には、取引の透明さを出す上では双方にメリットがあるでしょう。ただし、売主と買主で立場が違うため売主がインスペクションを実施するメリットをしっかり把握しておきましょう!
メリット①:売却物件のアピールにつながる
インスペクションを実施しているということは、取引上では物件の劣化具合をしっかり買主に告知することになります。そのためインスペクションを実施してくれているのであれば、買主としては物件に対する信頼・安全性が増すためアピールになりえます。
そのため、インスペクションを実施していることは、未実施の物件に比べて魅力的に映る可能性があると言えます。
既に大手ポータルサイトでも検索項目に使われている
上記の大手ポータルサイトであるスーモの物件詳細検索においても、インスペクション済みの検索項目が存在しています。
今後、インスペクションの認知度が上がってくれば、これを検索項目にすることがあるでしょう。
メリット②:引渡し後の不具合によるトラブル回避
不具合次第によって変わるケースバイケースですが、事前にインスペクションを実施しているのであれば、引渡し前には不具合がなかったと主張することはできます。
そのため、引渡し後の不具合による瑕疵の損害賠償請求の時に、買主負担で修繕を行うように調整することもできるかもしれません。
引渡し後の瑕疵担保責任については下記を参照してください。
メリット③:物件価値が上がる
インスペクションの実施が、先ほど説明した一次か二次、性能インスペクションによるものなのかで程度は違いますが、大まかには買主に対する安心・安全を確保するメリットがあるため、物件価格に反映することができる可能性が高いです。
そのため、売却するための時間によりますが物件価値を上げて売却活動を行うことができると思います。
インスペクションの売主デメリット
一方でインスペクションをすることのデメリットも把握しておく必要があります。一概にインスペクションを実施することはメリットだけではありません。
どんなインスペクションのデメリットがあるのか、しっかり把握しておく必要があるでしょう!
デメリット①:費用がかかる
インスペクションは売主自らが行うものではなく、第三者が行うことになります。そのためインスペクション実施をするための費用がかかってきます。
インスペクションが盛んなアメリカでは、500ドル程度がかかるそうです。つまり日本においても数万円程度がかかると考えられます。(一次インスペクションを想定した費用)
また、どちらが費用負担をするかどうかといった調整も必要になってきます。参考ではありますが、先ほど紹介したインスペクションが盛んなアメリカでは、買主が負担をするのが多いようです。
買主が負担する理由としては、次のデメリットにもつながる理由があると思います。
デメリット②:売主主導のインスペクションは信頼されない!?
先ほどのアメリカでは買主負担でインスペクションを実施するケースが多いことは説明しましたが、そこには売主主導のインスペクション実施には、信頼されないという心理があると思われます。
例えば、売主としては検査で瑕疵が見つかる場合には、それを隠して取引したいという心理が働くかもしれません。その時に何らかの圧力で瑕疵を隠すように働きかけることもできかねないのが、売主の立場だからです。
そういった背景を考えると売主主導ではなく、買主主導で行っていく方が取引の健全性はあるようになるかもしれません。
ただし、これも売主と買主との取引における調整要素ですが、引渡し後の瑕疵については瑕疵保険を利用して瑕疵が見つかった場合に補修費用が支払われるリスクヘッジも選択肢の一つかもしれません。
デメリット③:実施をしないと安全性がないと思われる!?
今後インスペクションを実施するかしないかは、自由ですが実施有無の説明は義務化されることになります。
それに伴い、インスペクションを実施しないということに対して買主の理解や判断能力がより必要になると思っています。あまり理解が足りない買主の場合には、その説明をされた時にインスペクションを実施していないということに対して、不安を煽る可能性があるかもしれません。
ただし、古い物件の場合にはインスペクションを実施したところでデメリットばかりになってしまうかもしれませんが、インスペクションは実施した方が良いかもしれません。
仲介会社でもインスペクションに対する対応が進む
もともとインスペクションのような住宅診断は水面下で行っている仲介会社もありましたが、今回のインスペクション実施の説明義務化に伴い、各社の対応が進むように思われます。
下記の仲介会社ではインスペクションへの対応が進んでいる会社となります。
野村の仲介プラス(野村不動産アーバンネット)
野村の仲介プラスでは、事前に検査を行うことで取引後の不具合について保証をする制度があります。内容としては下記のようなものがあります。
- 営業担当者のチェックだけではなく、専門家が検査を行います。
- 検査で不具合があれば、ご売却と同時に当社負担にて専門家が補修を行います。
- 保証期間は最長5年。補修した箇所も保証の範囲に入ります。
諸条件は実際にお問い合わせの上、ご確認ください。
引用元:ノムコム
住友不動産販売
住友不動産販売では、引渡しから2年間瑕疵による補修費用を保証する瑕疵保証サービスを提供しております。
- 引渡しから2年間、雨漏り・シロアリ・主要木部の腐食などが発見された場合、補修費用を一定額まで保証します。
- 瑕疵について最大で250万円までを保証
- 建物の瑕疵は「雨漏り」「建物構造上主要な部位の木部の腐蝕」「急排水管の故障」「シロアリによる被害」
諸条件は実際にお問い合わせの上、ご確認ください。
引用元:住友不動産販売