住宅ローンの連帯債務が残ったまま離婚が決まった場合、まずは連帯債務を解消することが大切です。
しかし、連帯債務を解消するには夫婦の年収や、売却した場合の自己資金が問題となることがあります。
本記事では、離婚後に住宅ローンの連帯債務を解消したい人に向けて、連帯債務の概要や連帯債務を解消するための方法や手続きなど解説していきます。
記事の目次
住宅ローンの連帯債務とは
住宅ローンを組む時に夫婦で連帯債務を組んでいた場合、離婚時に住宅ローンの取り扱いについて困ることがあります。
ところで、そもそも連帯債務とはどのような制度なのでしょうか?
連帯債務とは、借入人と同じ債務を負う契約
連帯債務とは主債務者の方と連帯して債務を負うというもので、連帯債務者は主債務者と同じ債務を負うこととなります。
例えば、3,000万円の住宅ローンを夫婦で組むのであれば、主債務者も連帯債務者もそれぞれ3,000万円満額について返済の義務を負う必要があります。
なお、債権者(住宅ローンを貸した金融機関)は、返済の請求をするにあたりどのように返済を請求してもよいとされ、例えば夫と妻いずれかに満額の返済を請求することもできますし、それぞれ半額ずつ請求するようなこともできます。
離婚したら連帯債務を解消しよう
まず、離婚したら連帯債務を解消することが大切です。
例えば、離婚後、夫が家に残り住宅ローンの返済を続けていくことが話し合いで決まった場合でも、連帯債務が残されたままだと、出ていった妻は元夫の住宅ローン返済が滞れば返済の請求がなされることになります。
住んでもいないのに、離婚後数十年もこのような状態でいるのでは安心して生活できないですよね。
また、連帯債務は夫婦それぞれが住宅ローンについて債務を負うことから、土地や建物の所有権を共有持分とすることが多いです。
先ほどの逆で、妻と子どもが家に残ることになり、夫が家を出ていくことになった場合で家について夫の共有持分が残ったままだと、元夫の承諾なしに売却するようなことができません。
そうでなくとも、元夫の共有持分が残ったままの家に住み続けるのは嫌だという方も多いでしょう。
住宅ローンを連帯債務で組んでいる場合には、離婚が決まった段階でまずは連帯債務を解消するよう動くことをおすすめします。
連帯債務を解消するのに必要な2つの手続き
ところで、連帯債務を解消するには具体的にどのように手続きする必要があるのでしょうか。
ここでは、連帯債務を解消するのに必要な2つの手続きについて解説していきます。
手続き①:金融機関と交渉して連帯債務を解消する
連帯債務を解消にするには、まず金融機関と交渉して連帯債務を解消します。
具体的には、以下のいずれかの方法を選ぶ必要があります。
- 住宅ローンを完済する
- 代わりとなる連帯債務者を用意する
- 住宅ローンを夫、または妻に一本化する
まず、住宅ローンを完済してしまえば連帯債務は解消されます。
手持ちの資金で離婚した時点の残りの住宅ローンを完済できれば、それが一番よいですが、ほとんどの場合、家の売却代金で住宅ローンの残債を完済することになるでしょう。
つまり、こうなると家は残りません。
一方、代わりとなる連帯債務者を用意するか、住宅ローンを夫婦いずれかの単独名義にする方法であれば、家を残すことができます。
離婚後、夫婦のどちらかが家に住み続けたいと考えているのであれば、上記のうちどちらかの方法を選ぶ必要があります。
住宅ローンの年収があるかどうかが見られる
夫婦での連帯債務を解消して、代わりとなる連帯債務者を用意するか、夫婦いずれかの単独名義にする場合のどちらについても、住宅ローンを返済していけるだけの年収があるかどうかが見られます。
例えば、夫の年収が500万円、妻の年収が300万円で3,000万円程度の借入をしていたような場合、夫単独であれば住宅ローンを借りられる可能性がありますが、妻単独では難しいでしょう。
そうした場合、両親や兄弟などを連帯債務者として用意し、その連帯債務者の年収が200万円程度以上あれば合算して500万円なので、住宅ローンを借りられる可能性が出てきます。
このように、連帯債務を解消するには、新しくローンの債務者となる人が十分な年収を持っているかどうかが見られ、条件を満たしていないかぎり連帯債務は解消できません。
手続き②:共有関係を解消する
住宅ローンの連帯債務を解消したら、所有権の共有持分についても解消する必要があります。
住宅ローンを組むと対象の住宅について抵当権を設定する必要がありますが、共有持分のままだと抵当権も夫婦で分かれた状態となっているため、これを解消する必要があるのです。
具体的な手続きについては司法書士に依頼すれば問題ありませんが、登記費用がかかる点に注意が必要です。
離婚時に売却すれば全て解決する
家の購入にあたり組んだ住宅ローンが夫婦の連帯債務となっている場合、まずは連帯債務を解消するよう動く必要があります。
しかし、連帯債務の解消は年収の問題も絡むため、ややこしくなりがちです。
場合によっては、金融機関の許可を得られず解消できないということもあるでしょう。
一方、離婚時に家を売却してしまえば、家はなくなってしまいますが、上記のようなことに悩む必要はありません。
売却手続きの進め方
離婚時に住宅を売却するための手続きは、通常の不動産売却の方法と全く同じです。
不動産会社に査定を依頼して、気に入った不動産会社と媒介契約を締結し、売却活動を行ってもらいましょう。
なお、離婚時の不動産売却はお互い早く関係を清算したいと思っていることが多く、売却を急ぎがちですが、あまりにスピードを重視してしまうと足元を見られることにつながりかねません。
ゆっくりとは言いませんが、足元を見られない程度には冷静になって売却を進めるようにしましょう。
住宅ローンの残債に注意
離婚時の住宅売却については住宅ローンの残債に注意が必要です。
アンダーローンの場合
アンダーローンとは、住宅の売却価格が住宅ローンの残債より多いことを指す言葉で、住宅を売却して住宅ローンを完済しても、手元にいくらかのお金が残ります。
基本的に、残ったお金については夫婦で等分に分けることになります(財産分与)。
オーバーローンの場合
一方、オーバーローンとは住宅の売却価格が住宅ローンの残債より少ないことで、例えば住宅ローンの残債が2,000万円あるのに、住宅の売却価格が1,500万円にしかならないようなケースのことを指します。
住宅ローンには抵当権があるため、上記で言えば差額分の500万円について自己資金で用意できなければ、そもそも売却することができません。
金融機関によっては、残債が足りない場合でも抵当権を抹消し、差額については引き続き返済していくといった形や、差額分をおまとめローンなどで融資してくれる可能性もあるため、こうしたケースでは金融機関に相談してみるとよいでしょう。
リースバックという方法もある
連帯債務の解消がうまくいかず、かといって子どものためにも家には住み続けたいといった場合、リースバックという制度を利用するのも一つの方法です。
リースバックとは、家を第三者に売却して、そのまま賃貸してもらうというものです。
賃料を支払う必要があるものの、家は売却してしまうため連帯債務や共有持分は解消されます。
リースバックという言葉になじみが薄く、具体的にどのように手続きを進めればよいか分からないという方も多いかと思いますが、リースバックを専門としている業者がいるため、そうした業者に相談すればよいでしょう。
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まとめ:状況に応じて最適な方法を選ぼう
離婚時に連帯債務や共有持分を解消する方法として、住宅ローンの一本化や住宅の売却、リースバックなどの方法があることをお伝えしました。
離婚後、夫婦のどちらかが家に住み続けたいと考えているのかどうか、その場合、住宅ローンの負担は夫婦のどちらかが行うのかなど、状況に応じていずれかの方法を選ぶとよいでしょう。